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家に帰って、鍵を開ける前の数秒間があります。

電気の消えた部屋に、これから自分だけが入っていく。その一瞬が、いちばん独身の寂しさを感じる瞬間でした。何か悲しい出来事があったわけじゃない。ただ、玄関を開けた瞬間の暗さと静けさが、毎日そこにあるだけ。

「寂しい」って、大きな事件で感じるものだと思っていました。でも実際は違いました。一人分の食器を洗うとき、一人分の洗濯物を畳むとき、テレビを見て笑っても誰も隣にいないとき。寂しさは事件じゃなく、生活の景色そのものに染み付いていたんです。

この記事は、前の記事(夜になると涙が出た話)とは少し違う角度から、独身の寂しさを書きます。あの記事が「瞬間」の話だとしたら、こっちは「毎日の景色」の話です。
30代独身、夜になると涙が出る。孤独がつらい男は自分だけじゃなかった話

① 鍵を開ける前の、あの数秒間

一人暮らしを長くしていると、この感覚に慣れてしまう人もいると思います。でも僕は、何年経っても慣れませんでした。

会社帰り、駅から家までの道は普通に歩けるんです。人とすれ違っても平気だし、コンビニで店員さんと軽く会話もできる。でも自分の部屋のドアの前に立って、鍵を差し込む瞬間だけ、一瞬だけ足が重くなる。中に誰もいないことが、分かりきっているのに。

あなた

わかります。玄関開けた瞬間の「ただいま」を言う相手がいないの、地味に堪えるんですよね。

ハル

それです。事件でも何でもないのに、毎日その数秒間だけは静かに堪えてました。

「ただいま」を言う相手がいない。それだけのことなのに、何百回と繰り返すうちに、じわじわ効いてくる。寂しさって、大きな出来事より、小さな繰り返しのほうが効くんだと、この頃に気づきました。

② 一人分の食器、一人分の洗濯物

生活の中で、いちばん寂しさが顔を出したのは、地味な家事の時間でした。

自炊をすると、鍋いっぱいに作っても食べきれないので、いつも量を減らして作る。作りながら「これ、誰かと一緒に食べたら美味しいんだろうな」と、ふと思う瞬間があります。洗濯物を畳むときも同じです。一人分の量は少なくて、あっという間に終わる。効率はいいはずなのに、その”あっという間さ”が逆に寂しい。

ハル

二人分作る手間を面倒だと思ったことは一度もなくて、むしろ「その面倒がある生活」がうらやましかったです。

誰かのために何かをする機会が、生活の中に一つもない。これは、思っていたより地味に重いことでした。別に不便じゃないんです。ただ、誰かの分を用意する手間そのものが、恋しかった。

③ 体調を崩したときが、いちばん堪えた

平気なときはまだいいんです。いちばん堪えたのは、体調を崩したときでした。

熱を出して寝込んでいても、誰も気づかない。買い置きのゼリー飲料を、フラフラしながら自分で取りに行く。「大丈夫?」と聞いてくれる人がいない静かな部屋で、天井を見ながら「もし今、このまま倒れたら、しばらく誰も気づかないんだろうな」と考えたことがありました。

あなた

それ、僕もあります。体調悪いときだけ、独身って選択がやけに心細く感じるんですよね。

ハル

普段は平気なのに、弱ってるときだけ急に効いてくるんですよね。健康なときは気にならないから、余計に不意打ちでした。

これは、婚活がうまくいかない・アプリに疲れた、みたいな話とは別の、もっと手前の話です。何かに挑戦して傷ついたわけじゃなく、ただ生活の中に、頼れる人が一人もいなかったというだけの話でした。
マッチングアプリに疲れた30代男へ

④ 「一人で楽しめる自分」と「分かち合いたい自分」は、両方本当だった

一人の時間そのものは、嫌いじゃありませんでした。趣味に没頭している時間は普通に楽しい。むしろ気を遣わなくていい分、楽なくらいでした。

だからこそ、ややこしかったんです。「一人が平気な自分」と、「誰かと分かち合いたい自分」が、同じ自分の中に両方いる。趣味を楽しんでいる最中に、ふと「これ、誰かに話したいな」と思う瞬間がある。一人が向いてないわけじゃなく、ただ分かち合う相手がいないだけでした。ここを混同して「自分は一人が向いてないダメな人間だ」と結論づけなくてよかった、と今は思います。

ハル

一人の時間を楽しめる自分と、寂しい自分。矛盾してるようで、両方ちゃんと本当でした。

⑤ 分かち合いたくて、動いてみた

一人分の生活に慣れることと、それでいいと諦めることは、別のことでした。

僕は「一人が向いてないから」ではなく、「分かち合いたい気持ちが本物だったから」動くことにしました。誰かのために食事を作りたい、体調が悪いとき気にかけてくれる人がいてほしい。それは弱さじゃなく、ただの本音でした。マリッシュを始めたのも、その延長です。寂しさを埋める道具というより、この本音に正直になった結果でした。

急いで結果を出そうとはしませんでした。ただ、「一人分でいい」と自分に言い聞かせるのをやめただけです。

⑥ 景色は、変えられる

鍵を開ける前の数秒間も、一人分の食器も、体調を崩したときの静けさも、事件じゃなく、ただの毎日の景色でした。だから、劇的な解決を探さなくていいと思います。

もし、この寂しさの先に「夜、涙が出るほどつらい」瞬間があるなら、そちらも書いています。
30代独身、夜になると涙が出る。孤独がつらい男は自分だけじゃなかった話

もし、婚活そのものに疲れていたり、病んでしまっていたりするなら、そちらのほうが今は近いかもしれません。
マッチングアプリに疲れた30代男へ婚活で病んでしまう30代男へ

一人分の生活は、ずっとそのままじゃなくていい。景色は、少しずつ変えられます。

Q. 独身男性が寂しいと感じるのはどんな瞬間ですか?

大きな事件よりも、帰宅時に誰もいない部屋に入る瞬間、一人分の食事や洗濯をする瞬間、体調を崩したときなど、日常の小さな繰り返しの中で感じることが多いです。

Q. 一人の時間が好きなのに寂しいと感じるのは変ですか?

変ではありません。一人の時間を楽しめることと、誰かと分かち合いたい気持ちがあることは矛盾しません。両方とも自然な感情です。

※あわせて読みたい:友人の結婚式がつらい30代独身男へ──祝福と「で、俺は」の帰り道

この景色の寂しさは、盆や正月の実家でいちばん濃くなる。

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